白山北部 湯谷頭、滝ヶ岳、間名古の頭 2010年5月4〜5日

所要時間
5/4  5:27 中宮温泉−−6:46 1200m峰 7:04−−8:36 1410m峰 8:56−−9:05 しなのき平避難小屋−−9:27 1430m鞍部 9:42−−10:47 滝ヶ岳−−12:46 ゴマ平避難小屋

5./5 4:40 ゴマ平避難小屋−−5:49 間名古の頭 5:55−−6:43 ゴマ平避難小屋 6:58−−8:44 しなのき平避難小屋−−9:08 荷物をデポ 9:21−−9:51 湯谷頭−−10:11 荷物回収−−11:39 湯谷を渡渉 11:50−−11:57 中宮温泉


概要
 中宮温泉から往復した。湯谷頭、滝ヶ岳、間名古の頭とも山頂近くまで登山道が通っているが山頂まで藪漕ぎが必要であり、楽に登るなら残雪期が有利。ルート上は特に危険箇所は無いが、大型連休中は??川を渡る橋がかかっておらず渡渉点を探す必要が生じる場合がある。また、湯谷頭及び滝ヶ岳の巻き道、1840m峰への登りは稜線上ではない場所にルートがあり、連休の時期は残雪に埋もれて夏道不明箇所が多く、登りはいいが下りは要注意。中途半端な残雪量で、夏道を外すと途中から藪漕ぎになる可能性が大。ガスって視界が無いと下山時に正しい尾根に取り付くのは困難。しなのき平避難小屋、ゴマ平避難小屋とも大型連休に雪に埋もれて使用不能はほぼ考えられない。両小屋ともしっかりした作りで安心して宿泊できる。

地図をクリックで地図を等倍表示



 白山エリアで唯一登り残しの2000m峰が間名古の頭だ。山頂直下を登山道が通っているので無雪期に登っても構わないのだが、中宮温泉からそこに至る途中にある2つの山(どちらも登山道は巻いてしまう)に登るとすれば残雪期がいいだろう。北向きの尾根なので上部は間違いなく雪に覆われているはずで藪漕ぎは無い。危険箇所も基本的に無いが、湯谷頭を巻くルートがどの程度の傾斜なのかだけが気になる。通常、トラバースがヤバそうな傾斜なら尾根を登ればいいのだが、湯谷頭の標高だと尾根上は藪が出てしまっている可能性が高く、夏道を行った方が楽だろうと予想した。ネットの記録を調べた限りでは例年なら巻き道にはほとんど雪は無いらしいが今年はどうだろうか。念のためアイゼンとピッケルを持っていくことにする。

 今回の計画ではゴマ平避難小屋を利用してテントは担がないことにした。ただし、小屋が雪に埋もれて入口が開かない事態も考えられ、念のためにツェルトは持っていくことにした。話によると冬用に2階にも入口があるとのことなのでたぶん問題ないはずだが。

中宮温泉 右岸側駐車場 少し上部から駐車場を見る

 今年の大型連休頭で毛猛山、桧岳という大物を登って体力を消耗し、1日あけて笈ヶ岳と登ってさらに体力を使ってしまった。本来ならば中1,2日空けて登りたいところだが、天気予報では好天は5日までとのことで、休養日無しで間名古の頭へ向かうことになった。中宮温泉駐車場の一番奥に車を置いて出発する。

デブリで覆われた林道 対岸に登山口標識。その近くにカモシカがいた
登山口標識前の橋はまだない 登山口下流の堰堤下流を渡渉した

 駐車場から先にも車道が延びているが入口には一般車の進入はご遠慮くださいとの看板があり、これに素直に従って舗装された林道を歩いた。いい傾斜で登り準備運動にちょうどいい。車なら切り返さなければ曲がれないような急なカーブを曲がって堰堤を越え、平坦地に出ると大量のデブリの押し出しで林道が塞がれていた。デブリを乗り越えてなおも林道を上がろうとしたら沢の対岸に登山口の標識が目に入ったのだが、沢を渡る橋が無い! ここはエアリアマップの赤線だから橋が無いわけがないと思うのだが・・・。靴を水没させず渡るのは無理な水量と深さで、上流に見えるスノーブリッジを使おうかと思ったが、いかにも薄そうで危なっかしくて渡る勇気は起きなかった(翌日下山したら崩壊していた)。下流側に堰堤があり、そのすぐ下部で川幅が広がって浅くなり沢の中に石があちこち顔を出している部分を発見、うまくルートを選べばジャブジャブやらなくても渡れそうだ。川岸に下りて飛び石をつないで無事対岸に渡ることができたが、今は早朝で雪解け水の水量が減っている時間帯だからいいが、明日の下山時に同じことができるだろうか。まあ、帰りは靴の中が濡れても駐車場まで下るだけだからいいけど。

橋があるはずの場所 急な階段を上る

 堰堤を乗り越えて登山口の標識付近に登り返して川岸を良く見ると、橋を支えるコンクリートの基礎だけが岸にあり、シーズン中は橋が架かっているらしかった。橋が元に戻るのはいつだろうか。こりゃ、別の登山口から登ってここに下ってきた人が驚くだろうな。

小尾根を登る 台地に出ると残雪が現れる

 登山口からいきなり急な階段で尾根に取り付くが、当然だが明瞭な夏道で雪のかけらも無い。傾斜が緩んで台地状の平坦地に出ると残雪が現れ夏道が隠れてルートが不明確だが、うまい具合に昨日のものと思われる先人の足跡がうっすらと残っている。まあ、周囲は藪が無い平坦地なのでどこでも歩けるが。

夏道はジグザグに上がる 斜面の植生は薄く適当に登ってもよい
この先で小尾根に乗る 小尾根に乗る。夏道明瞭

 やがてルートは右手の斜面をジグザグに登り始めるが、これがまた雪解け直後で地面表面が荒れておりどこが登山道なのか分かりにくい。地面の様子よりも周囲の植生でルートが判明する状態だ。時々小さな雪田を踏むがキックステップで通過できる傾斜だった。やがて尾根に乗ると道は明瞭となり、時々残雪を踏むがほぼ夏道を歩く。この先は湯谷頭と滝ヶ岳の巻き道以外は登山道は稜線上なので迷う心配はほとんど無い。

時々残雪が現れる 1200m峰

 今日は疲労が残ったままで無理はできそうになく、早めであるが標高1200m峰で最初の休憩。てっぺん手前の平坦地は残雪で覆われているのでピークの少し先の地面が出ているところに座った。昨日もクソ暑かったが今日も天気が良く、山ではツツドリが鳴いて自然も初夏モードだ。今日も麦藁帽子が活躍しそうだ。

湯谷頭へと向かう 薬師山
巻き道突入 雪がないところ

 休憩を終えて前進再開。稜線上を進んでいったら1箇所崩れやすい露岩の下りがあったが、下ると西から迂回するルートがあった。どこで見落としたのだろうか。まあいいけど。やがて湯谷頭の巻き道に入るが最初はさほど残雪は無く問題なく進んでいく。小さな谷になると雪が現れるが傾斜は緩く危険はなかった。ただ、雪が残る範囲が広がると「対岸」の夏道の続きがどこにあるのか分からず、藪に突っ込む可能性が出てきた。主に西斜面を巻いているので基本的に雪は少なく広範囲に藪が出ている場所も多く、残雪帯が終わったところで夏道が無いと藪漕ぎになってしまう。まだ先人の足跡が確認でき、それを追って行った。

すれ違った3人パーティー 谷の部分は広範囲に残雪に覆われる

 一番大きな谷を巻く箇所が一番残雪の範囲が広く、夏道がどう付いているのか足跡以外からはうかがい知ることができない。この区間は道が等高線に沿って付いているわけではなく下っているので厄介だ。先人の足跡を追って歩いていると反対側から3人パーティーがやってきた。これはラッキー! 昨日の薄い足跡と違って今付いた新鮮で明瞭な足跡があればルートファインディングは格段に楽になる。どこから入山してきたのか分からないが、この時期に入るのだからそれなりの経験の持ち主たちだろう。巻き道を下ってこられたのだから登りで危険な場所は無さそうで一安心。

巻き道が終わり稜線に戻る 湯谷頭を振り返る
昨日登った笈ヶ岳 このピーク上にしなのき平避難小屋がある

 3人パーティーはこの夏道を歩いたことがあるようで、広大な残雪の中に僅か数mしか露出していない夏道も正確に辿っていたのには驚きだった。谷が終わると残雪も消えるが、その後も断続的に夏道が雪に隠れている区間が登場する。でもさっきのパーティーの足跡があるので神経を使う必要がなくて楽チンだ。巻き道が終わって稜線に戻れば再び夏道だ。湯谷頭は帰りに立ち寄るとして今日は少なくともゴマ平避難小屋まで入っておきたい。そうすれば翌日の行動が楽になり、お昼くらいに下界に下山できるだろう。次の小ピークで少々休憩。

にしなのき平避難小屋 小屋の内部。けっこうきれい

 1533m峰へ向けて夏道を上がっていくと、途中の肩のような場所にしなのき平避難小屋が建っていた。小屋周囲には雪は無く、普通に1階出入口から入ることができた。外の造りはしっかりしているし内部はきれいで利用価値の高い小屋と言えようか。ただ、朝に登山口を出発した場合はちと近すぎるのが難点か。また、この小屋近くには水場が無く、今は周囲に残雪があるからいいが無雪期は水を持ってこないと。

平避難小屋から東に伸びる尾根 1533m峰へと登る
1533m峰を越える 1430m鞍部までの下りは断続的に夏道が出ていた

 1533m峰への登りはべったりと雪が付いていて気持ちいいのだが、この頃になると昨日の疲労も重なって足が重くなってきており登りはきつかった。下りなら靴底を滑らせて一気に下れる傾斜だが、登りでは歩幅を狭めて一歩一歩ステップを切りながら登ることになる。ピークからなだらかに下る間は稜線東側に残雪がついてかなりの夏道が隠れていたため雪の上を歩いた。もうこの時刻では雪が腐って硬い地面の上を歩く方がずっと楽なのだが。下りになると尾根直上の雪は消えて夏道が使えて楽だったが、下りに限っては雪が腐っていても雪の上を滑り降りた方がずっと楽なんだけどなぁ。

 雪が消えた1440m鞍部で単独男性が休憩中で、こちらも滝ヶ岳への登りに備えて少しだけ休憩。昨夜はゴマ平避難小屋に泊まったがいい小屋を一人で占有できて快適だったとのこと。滝ヶ岳西の巻き道が地形がなだらかで全面積雪で夏道不明で迷いまくったという。こりゃGPSでトラックログを記録した方がいいかなぁと考える。こちらも下り方面の情報を提供してから出発した。

1430m鞍部から登る 尾根を外れて残雪の帯を登る
地形が広くなり下りは苦労する地形 滝ヶ岳西斜面の台地。ここが下りで一番やっかい

 鞍部から登りにかかるとほぼ残雪が続き、樹林の背も高くて夏道の付き方が全く予想できない。とりあえずは尾根上を行けばいいが上部になると尾根がバラけてタダの斜面となり、登りは問題ないが下りはガスったら厄介な場所だ。目印も皆無だった。傾斜が緩んで台地状になると雪が締まって先人の足跡が薄くなり、さっきの男性の足跡は何とか追えるが3人パーティーの足跡は分からなくなってしまった。ここが男性が迷ったという場所で、足跡は一定方向ではなくジグザグにくねって歩いていた。そりゃ下りだから目印や足跡がないか探したくなるのも分かる。

荷物をデポして滝ヶ岳へ向かう この藪の向こうが山頂

 滝ヶ岳は山頂まで大した距離がないので行きに登ってしまうことにして、GPSで山頂が近づいた場所で木の根元に大ザックを置いて空身で山頂を尾服することにした。山頂直下まで雪原が続いているのが見え、最後は笹薮に突入するようだ。疲労が足に来ているのでジグザグに登っていき、できるだけ高いところまで続いている雪の帯の終点から笹に突入、しかし予想よりも笹が薄くてこれが夏道から続いているなら無雪期でもさほど苦労せず山頂に到達できそうだった。

滝ヶ岳山頂らしき場所 雪庇上の一番高い場所
滝ヶ岳から見た東半分の展望(クリックで拡大)

 笹薮帯は距離にして20mほどで、抜けると稜線上に飛び出した。稜線東側はなだらかで広大な雪原が広がり何とも気持ちいい場所だった。山頂付近は平坦地で特に高まりがあるわけではなく、GPSで山頂位置を特定したが、目印や標識は皆無だった。今回は赤テープは持参していないので目印は残さなかった。

滝ヶ岳を下り夏道を探して斜面をトラバース 尾根に戻ったところから滝ヶ岳を見る
1580m鞍部への下りも雪が多い でも尾根直上は夏道が出ていた

 デポしたザックを回収し、巻き道に下っていくと私が歩いた場所より幾分下にトレースが付いていた。そしてとレースの先にはちゃんと夏道があって藪漕ぎしないで済んだ。この先は残雪が続くかと思いきや、稜線上は意外に雪が消えて夏道が出ていた。でも夏道が少しでも稜線東に移ると雪の下に潜っていた。下りは雪の上を滑り降りた方が楽なので積極的に雪を使った。

滝ヶ岳を振り返る 1840m峰への登り
尾根を外れて斜面を登る 振り返る。中央の残雪の帯を登った
地形が広がり下りはやっかい 登ってきた斜面を振り返る

 雪が消えた1580m鞍部から登りにかかると再び残雪歩きとなり、1690mまでは明瞭な尾根上を行ったがその上は尾根がバラけて斜面となり、先人の足跡も不明瞭なので適当に上がっていった。どうせ最後は稜線に上がるのだからどんなルートでも上を目指せばいいので気楽だ。帰りが心配であるがGPSの電源はまだ入れたままなので登りで通ったルートはGPSに記憶されるはずだ。

稜線に出た この辺に池が埋まっているらしい
やっとゴマ平避難小屋発見 ゴマ平避難小屋から見上げる2060m峰への登り
ゴマ平避難小屋 小屋内部。かなりきれい

 適当に稜線に出ると先人の足跡に遭遇、まだ尾根を下ってから北西に向きを変えたらしい。まあ、藪さえ迂回できればどんなルートでもOKだが。私が稜線に出たのは1840m峰の僅かに南側だったようだ。ここまで来ればゴマ平避難小屋は近いが、樹林に紛れているのかどこにあるのか見た眼ではわからなかった。なだらかな雪原を歩いて緩やかに登ると右手に夏道が出現、そして一段高くなった場所に2階建ての立派な小屋が建っていた。小屋の前には雪はなくて1階入口から出入り可能だった。やれやれ、今日はもう疲れた。時間はまだたっぷりあるが雪は腐ってグザグサだし、こんな条件で苦労して間名古の頭を往復するよりも早朝の雪が締まった時間帯に往復した方が得策だろうと判断して本日の行動を打ち切った。

 小屋はまだ新しく木の香りが強かった。トイレは中にあったがまだ気温が低い時期だし2重のドアになっていることもあってか匂いは感じなかった。小屋には銀マットが数枚あり、これなら持ってこなくてもよかったかなぁ。暖かいうちに水作りを済ませ、跡はやることが無くなって日当たりの良い屋外で昼寝したが暑すぎて眠れないくらいだった。今年の連休後半は北陸地方は最高気温が連日30℃近く(越えた日もあった)あり、山の上も暑かった。

 夕方近くになって外は涼しくなってから小屋の中に入り、暗くなる少し前に一人宴会開始。やっぱり他にお客が来ることはなかった。夜間は冷えるかと思ったらダウンジャケットに厳冬期用シュラフでは暑すぎて起きだしてしまい、温度計を見たら+10℃! 小屋の断熱性がいいのかと思ったら翌朝の日の出前の出発時に外に出て温度計を見てもやっぱり+10℃で、こんな高さでもえらい暖かさだった。今の時期、2000m近いと日の出前は-5℃くらいまで気温が下がっても不思議ではないのだが。

2060m峰へと広大な斜面を登る。月が出ている 汚い雪の方が沈まない
振り返る もうすぐ稜線。結構な傾斜

 翌朝、朝飯を食って間名古の頭へ出発。最初から急斜面を登ることになるので締まった雪に備えてアイゼンを装着。ところが歩き出してすぐに雪が全く締まっていないことに気づいた(ここで温度計を見て+10℃を知った)。締まった雪の上を歩いて楽々往復と考えていたが・・・・。足首まで潜る雪を踏みしめて一直線に高度を上げていく。雪面は真っ白な新雪と黄色く汚れた古い雪とが斑模様に分布していたが、古い雪の方が締りがいいのでできるだけそちらを選んで歩くようにする。上部になるほど傾斜がきつくなって足への負担が増えるので最後はジグザグに高度を上げていく。昨日ここを下った足跡は気持ちよさそうに一直線に下っている。俺も帰りはこうできるな。

2060m峰北東尾根上から見た南方向(クリックで拡大)
2060m峰東斜面を巻く 2077m峰との鞍部付近でいったん尾根に出る
2077m峰も東斜面を巻く 間名古の頭が近づいてくる

 最後は東に巻き気味に登って2060m峰のてっぺんは登らず東側を巻く夏道に従って歩くようにした。東斜面なので一面の残雪で立ち木も皆無で夏道は影も形も無い。東斜面は北斜面よりさらに雪が緩んで脛まで潜る箇所もあり、ワカンが欲しいくらいだった。これが連休前の三引山のような雪質ならどれほど楽だろうか。次の2077m峰も東から巻いてしまい、ずっと水平移動で稜線に出て三俣峠へと下っていく。稜線上はどういうわけか雪の締りが良くて東斜面より格段に歩きやすかった。

三俣峠 2040m肩から見た2077m峰

 鞍部から最後の登りにかかり、尾根が右に屈曲して県境稜線が分岐するピークは露岩となっていて雪が消えていた。ここで県境稜線に乗り、木が生えていない雪庇上を歩いていく。たぶんシラビソの列が本当の稜線なのだろう。夏道はどこかで右に逃げていくのだが一面の残雪でトラバース開始点がどこなのかわからなかった。

2040m肩から見た間名古の頭 間名古の頭山頂。広い
間名古の頭から見た白山(クリックで拡大)
間名古の頭から見た北方の県境稜線(クリックで拡大)
間名古の頭から見た地獄尾根

 気持ちのいい雪稜線を登りきった所が間名古の頭山頂だった。長い山頂部分でここが一番高い!と言える部分は見当たらないが、GPSが告げた付近で写真撮影。西から北にかけて生えているシラビソにDJFの目印が無いか探したが、彼は無雪期に登っているので目印は雪の下かもしれない。他に目印が無いか探したが全くなかった。ここまで来ると白山も近いが核心部は全て登ってしまっているため今回はパスだ。夏場にのんびり登るのもいいかもしれない。

2060m峰の下りは適度な傾斜で楽しい あっという間に避難小屋に到着

 帰りも同じルートを辿ったが、腐った雪も行きの自分の足跡があればかなり楽に歩け、2060m峰からの下りは白く柔らかい新雪の部分をつなげて半分滑りながらあっという間に下り、登り30分のところが下りは5分であった。夏道ではこんな芸当は不可能だ

 小屋に戻って荷物をまとめて下山開始。今日は世の中では連休最終日だし、天気予報では明日から崩れるとのことで上がってくる人はいないだろう。尾根がバラけた場所でも今日のように天気が良くて先の様子が見えれば鞍部向かって適当に下っていけばちゃんと尾根に乗ることができ、昨日のGPSのトラックログの出番はなかった。でもガスられたらここを下るのは難しいだろう。藪を漕いででも尾根を下った方がいいだろう。

この谷を登ることにした うまく稜線まで雪が続けばいいが

 湯谷頭をどこから登るかであるが、常識的には巻き始める場所に荷物をデポして稜線上を行けば、稜線東側に続くはずの残雪を有効に使用できる。ただし荷物回収で下山とは逆方向に戻ることになり無駄が多い。昨日に巻き道を歩いた感じでは山頂から南西に落ちる大きな谷なら稜線まで残雪が続いていそうな気配で距離も近く利用価値が高そうなのだが、巻き道で標高が下がった位置から登ることになり50mの標高差を損する。そこで巻き道の標高が落ちる手前の小さな谷から稜線に上がることにした。問題は谷から稜線まで雪が続いているかどうかで、現場に行くと谷は雪でいっぱいだが途中で右に屈曲して上部の様子が見えない。まあ、藪漕ぎになっても長距離ではなかろうとアタックザックを担いで出発した。もう雪が緩んでアイゼン、ピッケルは不要と判断して手ぶらだ。

残念ながら雪の末端が見えてしまった 残雪を求めて左の尾根に移る

 谷の傾斜は大したことなくキックステップで問題なく登っていくが、屈曲したすぐ先で雪が消えてしまい笹薮が出てしまっている。周囲を見ると左の斜面に斑に雪があるので谷を離れて左の尾根に取り付き、これまたできるだけ雪が高いところまで残った雪田を登るが露岩の手前で雪が消えてしまった。この先は潅木藪が待ち構えているが、さてどれほどの距離だろうか。

しかし露岩手前で雪が消える 潅木藪に突入

 露岩右側から潅木に突っ込んで登りはじめると小凹地で小さな雪田が登場、その先の登りは再び潅木藪だ。できるだけ薄そうな場所から斜面を登り、桧が生えた小さな肩を乗り越えると目の前に雪が現れた。ここが稜線だった。稜線東側はいっぱいの残雪で、これなら正直に稜線を登った方が距離があってもずっと雪が使えて楽だったかもしれない。

藪を抜けて残雪に出る 稜線に出た

 残雪さえあれば藪から開放され、歩行スピードは劇的に上がる。大きな地形で見れば緩やかな尾根を反時計回りに歩く形になる。当たり前だが人間の足跡は無くカモシカの足跡だけが残っていた。平坦な尾根になると立ち木が無くなり西側の展望も開け、山頂付近も見えてくる。山頂はこの平坦地の先端だが雪と藪の切れ目付近らしい。うまくいけば三角点が出ているかもしれない。

稜線東斜面はずっと残雪が続く 笈ヶ岳
残雪終点付近が湯谷頭山頂 湯谷頭三角点

 残雪が終わって細い潅木と薄い笹の藪に突っ込んで三角点がないか地面を捜索するとあっさりと発見、雪が無くなった境界から2mくらい藪の中に入っていた。山頂標識は無いが木の高い位置に目印の荷造り紐はあったので残雪期に登る人はいるようだ。これで今回予定していた3山は全て山頂を踏めたので大満足だ。帰りも同じコースで登山道まで戻ったが、潅木藪も下りなら大した障害にはならず雪渓に出ることができた。

ザックデポ地に戻る 寝た木が一番邪魔

 再び大ザックを背負い、消えかかった古い足跡と昨日の記憶を頼りに巻き道を進んでいく。巻き道はまだ横に寝たブナの木が一番邪魔で、少しルートを外れてでも木の隙間を選んで歩くようにした。その邪魔な木も巻き道区間が中心で、尾根上の登山道に出ればほとんど無くなり快調に進める。

 1200m峰付近の残雪上には、明らかに今日付けられたと思われる明瞭な登り方向の足跡があった。ということはどこかですれ違ってもいいはずだが・・・。もしかしたら私が湯谷頭を往復中に巻き道を通過してしまったのか、それとも巻き道で正規ルートと離れた場所を歩いていてお互い気付かなかった可能性もある。連休最終日に入るということは、日帰りだろうか。だとしたら滝ヶ岳くらいが限度かな。

 新しい足跡のおかげでルートが分かりにくい残雪帯も問題なく歩けた。稜線を離れて東に下るところも問題なし。広い東斜面の下りは残雪帯が現れたところで登山道を離れて雪渓を滑り降りて時間と体力を節約。階段を下れば問題の沢の渡渉であるが、もしかしたら昨日か今日にでも橋を復旧する工事が終わっているかと期待したが、やっぱり世の中甘くは無く橋はかかっていなかった。たぶん林道を塞ぐデブリが溶けて重機が入れるようになってからなのだろう。

登山口に戻る。やっぱり橋はないまま 登りと同じ場所で渡渉

 橋のあった場所は水深が深く靴を浸水させず渡るのは不可能なので、行きと同様にすぐ下流の堰堤を乗り越えてその下流部の浅瀬を渡ることにした。心配だった日中の雪解けによる増水はほとんど感じられず、途中にいくつかある石を使って無事対岸へ渡ることができた。下界は今日も暑く、車に戻る前に川岸で少々水浴びしてさっぱりした。

中宮温泉の猿

 デブリの手前には車が2台あり、1台は近くにいた長靴の男性(たぶん山菜取り)のものだろうが、もう一台は雪の上に残った足跡の主だろう。中宮温泉駐車場に到着すると観光客の姿がけっこうあった。中には満開の桜の木陰でお昼を楽しんでいるグループも。日向は暑いが木陰は少し風があって快適だろう。東京だと1ヶ月以上前の風景だ。

 

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